デザインって?
デザインって何だろう。ファッションに関する事?ビジュアルに関わること?「それいいデザインだね」と何気なく日常会話に出てくる”デザイン”という言葉。
デザインって一体何なのでしょう・・・。
巷に溢れかえる様々なデザイン。お洋服も、車も、建物も、街だってデザインされています。そして、デザインという言葉は、環境デザイン・キャリアデザイン・ライフデザイン等々、ビジュアルに関することにだけに使われるものでもない様です。では、そもそもデザインって一体何なのでしょう。
今回は、改めてデザインについて考えてみたいと思います。
日本では、デザインというと服飾・商業美術・建築・工業製品など、“意匠”のニュアンスで使用されることが多いように見受けられます。日本弁理士会は、「意匠とは簡単に言えばデザインのこと」と答えているのを見ると尚更こんがらがってきそうです。
そこで広辞苑を開いて見てみると、『デザイン』は「素描」や「図案」の他に「意匠計画。〜総合的造形計画」とあり、やはりビジュアルに関わることなのかな?と思ってしまいます。狭義の意味ではもちろんそれで良いと思います。
コミュニケーションツールとしてのデザイン
普段私達は、デザインなんて全く気にせず生活をしています。けれども、スムーズに電車の乗り継ぎが出来たり、初めて行く建物の入り口がすぐに分かったり、いちいち考えなくてもドアノブが分かって戸を開けられたり、スーパーの前を通りかかった際に今日は特売日だとすぐに分かったり等々、何の不自由もなく楽しく日常生活が送れております。それも実はデザインのお陰だったりするのかもしれません。
だいぶ昔のことですが、私が駆け出しのデザイナーだった頃の印象深い出来事をお話します。
ある日、先輩のデスクの横を通りかかった際、透明パウチに入れられたオレンジ色の液体が目に飛び込んで来たのです。
その瞬間「うわっ!何だこの毒々しい液体は!」と思ったのですが、なんとそれはただのオレンジジュースでした。
まだ商品としてパッケージングされていないその”モノ”は、見た瞬間は得体の知れない存在として不気味に感じられました。その後、その”モノ”がオシャレにパッケージングされた時に、”デザインされること”の素晴らしさを再発見したのです。
あの時の体験は、自身でデザインを担当する際に大いに役立ちました。
顧客は一体売り場でどの様に商品を認識しているのか、あるいは全く認識せずに通り過ぎてしまうのか。それなら我々は認識してもらうためにはどうすれば、どの様にすれば認知してもらえるのか。などなど、お客様目線とはどのような目線なのかを強く意識するようになった出来事でした。
ダルハウジー大学のラルフ教授とブリティッシュコロンビア大学のワンドはデザインを以下の様に定義しております。
特定環境・制約・要件下での目的達成を意図して、ある主体が、基本的な構成要素を用い、対象の仕様を生み出すこと
『特定環境・制約・要件下での目的達成を意図して・・・』まさに私が見た”モノ”は、まだ目的達成を意図せずに置かれていた”物体”だったので、得たいの知れない”モノ”として私は認識してしまった訳です。
結論、デザインという言葉の意味は、簡単ににこれと言い表せる様なことではないとは思いますが、電車の乗り継ぎがスムーズに行えたり、男子トイレと女子トイレの違いがすぐに判別出来たり等々、広義では、言葉に変わる伝達手段として、人々のコミュニケーションを円滑にし、日常生活をスムーズに、ひいては社会を豊かにするための基盤となるものだと考えられます。
デザインの未来
そのように考えていくと、デザインとは、デザイナーが占有するものではなく、様々なバックボーンを持った人々が、相互に関わり合いながら、より良い未来に向かって生み出すコミュニケーションツール(システム)全般のことを指すと言っても過言ではないと思いますし、そのようなツールになりつつあるのではないかと思われます。
これから先の未来では、生活スタイル全てにおいてデジタルインフラが浸透していくことは自明ですが、多くの人々はその反動からか、むしろ有機的に繋がっていくことがより一層望まれる社会になっていくでしょう。
その時には、良くも悪くも過去の経験を基にして、”コミュニケーション”をデザインしていくことになるでしょうし、そう考えると一デザイナーとしては、特に若年層・子供達に対して、より良いコミュニケーションの場を提供していくことができればと、強く願っております。