売り場に立ったことのないAIに、
売れるデザインが解るのか。

AI全盛期に、なぜ「不完全さ」が刺さるのか。
デザイン系の記事を読んでいると、ある言葉が繰り返し目に飛び込んできます。
「AI完璧主義への反動(Designed Imperfection)」というワードです。
Canvaの公式トレンドレポートも同様の潮流を指摘しており、完璧に仕上げられたAI生成ビジュアルが溢れるなかで、あえて整えない、揺らぎのある表現 がユーザーの記憶に残りやすくなっているとのこと。
DIYやコラージュ、スクラップブック風のスタイル、ステッカー、破れた紙のテクスチャ、手書き文字などが具体的な表現として挙げられています。

販促デザイナーとして、この流れをどう読むか
写真におけるフィルムの存在が、デジタルに置き換えられた時と同様、生成AIの出現からずっと気になっていたまさにその事が顕在化している昨今。
AIで生成されたバナーや、ちまたに溢れているビジュアルを眺めていると、どれもクオリティは高いが、なぜか似たような印象で埋もれてしまっている。YouTubeを見ていてもその様に感じることが多々あります。
AIが量産できるのは「平均点以上」のデザイン。その様な中で、人の手が生む「揺らぎ」こそ、記憶に残る販促物としてお客様のココロを動かすのではないでしょうか?たとえばチラシひとつをとっても、AIが生成する構図は確かにきれいです。
しかし、非常に簡単な言い回しをさせていただくと、手書きの吹き出し・わざとかすれさせた線が入った途端に「人の息吹、温もり」が感じられる様になったりだとか、また例えばタイトルを大胆に紙面からはみ出させる「人間的エラー」を敢えて演出して有機的な動きを表現する・・・・等々。
Shopifyのグラフィックデザイントレンド解説でもその点を裏付けており、「デザイントレンドがますます合理化され、ミニマリズム、幾何学的形状、サンセリフフォント、AI生成ビジュアルに支配されるようになったため、複雑さ、装飾性、人間の手の感覚への需要が高まっている」と記されています。

この合理化から装飾性への反動は、具体的にどの様な表現が求められているのかを今後探っていきたいと思っており、歴史をさかのぼるとアールヌーボーからアールデコへと変遷した枠組みを逆行するような流れには、大変興味深いものがあります。
これは、ある意味デジタル空間でのコミュニケーションの空虚さに対する無意識での抵抗、または真のコミュニケーションへの渇望が生み出すムーブとも考えられ、この流れを注視しながら販促施策を考えて行くことは、店頭コミュニケーションを考える上でさらに重要なことになってくると思われます。
また、店頭販促からは外れますが、ハンドクラフトのトレンドは特定の業種との相性が抜群に良いことも分かってきた様で、D2Cブランド、食品・飲料、クラフト系のサービス、教育etc.「人の顔が見えるビジネス」ほど、手仕事の表現が刺さるとのこと。物作りをしている方々にとっては大変嬉しい流れですね。
おそらくこのトレンドは比較的長期にわたって続くのではないでしょうか?
AIという“黒船”によって、開かれた新しい世界のおかげで、改めて人間の素晴らしさを再確認、再認識する・・・・。
さて、ひるがえって店頭販促デザインの分野に戻りますと、売り場においてお客様が棚に陳列されている“ある商品”にフォーカスする時間は僅か0.3秒と言われています。
つまり、よほど何かが視線をロックしない限り素通りされる可能性が非常に高いわけです。毎回課題が出されると、どうすれば来店客の視線を釘付けにできるか?というワクワク感にも似た想いで取り掛かるのですが、それも生産者(商品)とお客様を繋げるPOPという存在に息吹を宿らせたいと考えているからであり、AIなら瞬時に出来ることも限られた時間内で愚直に奮闘し、脳から出た汗で出来上がったデザインとはきっと何か(感動の種類)が違ってくると信じています。
店頭という“場”をしっかりと肌で感じられる“人”にしか出来ない表現、売り場の雰囲気・賑わい・匂いなどを五感で感じられる人間にしかできない“表現”というものが間違いなく存在し、それを販促ツールの総合的な活用で表出させることで、あたかも“作った人”と“買う人”が一対一で向き合っている様な“買い場”を作り上げたいと考えます。
店頭販促という直接お客様と向き合う媒体、最後の購買の一押しをする“販促ツール”をデザインする私達は、AIによって瞬時に作られるPOPや、美しくまとめられたフォーマットで作られたPOPとはひと味違う切り口をご提案することが使命です。決してAIを否定したい訳では無く、これからは店頭販促デザインという分野に、AIの力を借りながら、より購買客を魅了し、お買いものが楽しめる売り場作りを目指して努力をし続けたいと考えています。

「人間らしさ」を販促に活かすために
このトレンドは、ツネオデザインの強みを改めて気付かせてくれた気がします。
【デザイン】
販促ツールの納期はその性格上、短納期が基本です。そのためラフではなく、サムネイルという、ラフを描く前のアイデアスケッチ後、すぐにデザインに進むことも多いのですが、あえて鉛筆や筆ペンで手描きをし、その揺らぎや不揃いな線を仕上げに活用することは手段のひとつとしてよく使います。
デザイナー個人個人の感性は、同じものを作ってもいわゆる〈 視覚的な“におい” 〉となって伝わります。
代理店時代、大勢のデザイナーがいる中で、このデザインは誰々さんのだ、と判別できることは本当に興味深い体験でした。手練れになればなるほど、そのにおいを消そうにも、どこかで分かってしまう。AIに誰それ風のデザインでとお願いしたらそれらしく仕上がるものの、そこはまだ代替は不可能な部分というよりも、AIに意識が芽生えて個が発露しない限り、決して取って変わられるものではないと考えます。
とは言うものの、それが産業革命時のラッダイト運動の心理が自身の中に潜んでいるのでは無いかと内省している点でもあり、今まさに揺らいでいる点でもあります。
アーティストであれば、この揺らぎこそが作品の個性になると思うのですが、コモディティ商品を広くあまねく普及させることが使命の私達にとっては、払拭しなければならない点です。
従って、前述したとおりAIとの対話は継続しつづけて行かなければならないですし、その対話を踏まえてより良い方向へと進歩していければと考えております。
印刷仕様の提案に「質感」という軸を加え、クラフト紙にシルクスクリーン印刷、マット加工にスポットUVで手触りを演出——こうした加工提案は、競合の「デジタル一辺倒」の提案と明確に差別化できます。受け取った瞬間に「ブランドの価値」が伝わる接点づくりも、意識している提案のひとつです。
「揺らぎ」を武器に
AIツールが当たり前になった今、「ラフな手描き」や「不揃い」は、意図した表現として、より好意的に受け手に届くようになったのではないかと思います。
ツネオデザインは、AIの効率と人の手仕事を組み合わせることで、「どこかで見たデザイン」に埋もれない販促物をつくっていきたいと考えています。この流れ、ぜひ一緒に取り入れてみませんか。
ご相談・お問い合わせはツネオデザインまでお気軽にどうぞ。
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