2026.03.27

【トレンド通信】ネオ・ブルータリズムって?

デザインのトレンドを知る手段はいくらでもあるものの、やはり都心に出向き様々な業態の店舗巡りをしながら販促ツールを眺めるのは、大変勉強になります。
その様な中、数年前からじわりとやってきて、昨今のトレンドとなっているネオ・ブルータリズムについてお話します。

ブルータリズムは第二次世界大戦後の1950年代、世界中で流行した建築様式のことで、コンクリートが多用され装飾を排した簡素で大型の構造物がその典型とされ、第二次世界大戦後の1950年代に世界中で流行しました。ミニマリズムに加え、重厚で角張ったフォルムというブルータリズムの象徴的特徴は(例えばホイットニー美術館だったブロイヤー・ビルディング)一般の人々の間でも賛否両論にさらされてきたそうです。

その無骨さは、終戦から10年ほど経った時期の流行ということを踏まえると、先の大戦における各国の多大な犠牲のもとに、皆が前を向いて立ち上がろうとする気運やうねりを象徴するもの、もしくはその時代ならではの人心の活力や人間の堅牢な意志に建築家が感応して表出した“形”なのかもしれません。
ブルータリズムの目指したものが、平等主義の理想の反映というところからも、あながち的外れな意見ではないように思います。

そんな“ブルータリズム”を再解釈して、グラフィックに反映したのが“ネオ・ブルータリズム”。太い枠線、粗いテクスチャー、不揃いなレイアウト、そしてビビッドな配色を取り入れているところは今風の解釈というところでしょうか。Webデザインでも良く見かけるようになりましたが、非常にインパクトがありながらも遊び心満載な人間味に溢れた表現というところからも、そのトレンドは昨今の生成AIが作り出す均質感が否めないビジュアルに対する当然の反動の様にも感じられます。

弊社でも、ネオ・ブルータリズムの要素を取り入れたサージカルマスクのパッケージデザインがありますので、ご紹介いたします。

幾何学的なグリッド構成で全体をまとめたデザイン面。数多ある商品群の中で、その高い機能性と信頼感を店頭で埋もれさせずにアピールする為にも、力強さを前面に押し出し、ブルータリズムの無骨さを取り入れたビジュアルに。そして、商品特長を伝えるコピーを斜めにレイアウトしたり、少しの遊び心を散りばめてパッケージをデザインしました。

さて、「ブルータル」とは「獣のような、荒々しい」の意味だそうですが、私個人としてはむしろ無駄を削ぎ落としたその様式からは、ある種の繊細さを感じます。
写真家を目指していた20代、夜中によく川崎の工場地帯へ写真を撮りに出向いていたのですが、昼間は人間の下僕としてひたすら働いている工場や機械たちが、夜のとばりが下りる頃から不思議な魅力を発し始めます。
昼間とはまったく違う表情に魅了されて長いこと写真を撮り続けていたのですが、ブルータリズム建築も同様その存在感は、時間帯によっては、おそらく全く別の表情を見せてくれると思います。
装飾性を排除した機能美からあふれ出てくる美や、存在そのもののパワーは、まるで岩舟のような力強さを感じますし、今から思うとそれと同じものを夜の工場に感じていたのかもしれません。
そしてその独特の存在感には自身の孤独感を投影することができ、まるで旧知の仲のごとく不思議なシンパシーが感じられ、とても居心地の良い遊び場でした。
昨今のトレンドの話から自身の過去が思い出され、甘味な郷愁を感じています。

 

 

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