Retail Channel Intelligence Report
買い場レポート
〜 流通販促インテリジェンス 〜
2026.03.20 Vol.2026-06  |  2026年3月20日号
過去6ヶ月の重要情報を厳選
今号のハイライト リテールメディア市場が前年比129%の6,066億円へ急拡大 / PB偏重による NB集約が加速 / AIを活用した店頭パーソナライゼーションが本格普及 / ドラッグストア好調・百貨店の苦戦続く

◆ 市場データ ダイジェスト

1
2025年上期・小売業販売額
77.6兆円(前年比+2.7%)
2
リテールメディア広告市場
6,066億円(前年比+29%)
3
ドラッグストア販売
前年比+6.2% で最高成長
4
リテールメディア市場 2035年予測
1兆905億円(Google&BCG調査)
🔥 最重要トピック

リテールメディアが「第三の広告市場」へ——
メーカーの販促費配分戦略が根本から変わる

Google・BCGの共同調査により、店舗事業者のリテールメディア市場が2025年の1,190億円から2035年には1兆905億円へ約9倍に急成長するとの予測が発表された。この数字は業界に衝撃を与え、メーカー各社のマーケティング予算配分の見直しを加速させている。


特に注目すべきは、これまで「営業部門の現場販促費」として扱われていたリテールメディア出稿が、今や「広告宣伝・マーケティング部門の本予算」として位置づけられるようになった点だ。購買データに基づく効果の可視化が進んだことで、投資対象としての説得力が飛躍的に高まっている。メーカーにとっては、ROIが明確に測れるデジタル先進小売に対して販促費を優先配分するという「チャネル政策の大転換」が迫られている。

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PB(プライベートブランド)偏重が加速——NB集約の流れは不可避か

食品スーパーを中心に、PBの品揃え拡充が急ピッチで進んでいる。イオンの「トップバリュ」、セブン&アイの「セブンプレミアム」はいずれも品質訴求を強化し、ナショナルブランド(NB)との価格差を縮める戦略を打ち出している。一方、棚スペースの制約から、NBの取り扱い品目数を絞り込む「NB集約」の動きが顕著で、中小メーカーには厳しい環境となっている。大手小売業にとっては差別化と粗利改善の一石二鳥の施策だが、メーカーには取り扱い継続のためのより強力な店頭提案が求められる。
📌 小売・メーカー共通の注目点:棚割りにおいてNBが生き残るためには、単なる価格訴求を超えた「売場提案力+売上データ」の提示が不可欠になっている。
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メーカーのチャネル政策転換——デジタル先進小売への販促費「優先配分」が始まる

三井物産戦略研究所の分析によると、ID-POSデータやアプリ会員データなど高精度のファーストパーティデータを持つ小売業に対して、メーカーが販促費を優先的に投下する動きが鮮明になっている。食品・飲料・日用品メーカーを中心に、宣伝部門とトレードマーケティング部門の予算を統合し、リテールメディアへのシフトが本格化。従来のリベート・売上協力費という形式から、データに基づくROI重視の投資へと構造が変わっている。中間流通(卸)もこの変化の中で「つなぎ役」としての新たな機能が問われている。
📌 メーカー営業へのインパクト:小売バイヤーへの提案において、自社商品の購買データ分析と「売場投資リターンの可視化」が商談の必須要件になりつつある。
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インストア・リテールメディア急拡大——デジタルサイネージとアプリクーポンが牽引

2025年の店舗事業者リテールメディア市場830億円のうち、デジタルサイネージが210億円を占め、その訴求力と認知効果が再評価されている。ファミリーマートは全国約56,000店舗のサイネージをメディア化し、テレビ局さえも広告主として引きつける「まるごとメディア」化を推進。コンビニ各社のアプリクーポンは、過去の購買実績に基づいたターゲティング配信で高いROIを実現し、メーカーからの出稿需要が急増している。電通デジタルの調査では、流通アプリは「買い物直前」に閲覧されることが多く、商品認知・興味喚起・購買促進の三段階すべてに効果を発揮することが実証された。
📌 店頭施策の優先度:デジタルサイネージ+アプリクーポンの組み合わせは、従来の紙POPや特売チラシに比べて費用対効果の説明がしやすく、稟議が通りやすい。
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ドラッグストアが6.2%増で躍進——食品強化とセルフメディケーション需要が背景

経済産業省の商業動態統計(2025年上期)によると、業態別ではドラッグストアが前年比6.2%増と最も高い伸びを示した。食品カテゴリーと調剤医薬品の両面で成長しており、「食品も薬も日用品も」というワンストップ購買ニーズの受け皿となっている。対照的に、百貨店は販売額が減少。スーパー・コンビニ・家電量販店・ホームセンターは増加傾向だが、伸び率はドラッグストアが群を抜いている。メーカーにとっては、ドラッグストアチャネルへのリソース配分増強を検討すべき局面だ。
📌 チャネル政策の示唆:クスリのアオキなど高成長ドラッグストアでは「フード&ドラッグ」モデルが確立しており、食品・飲料メーカーのドラッグチャネル専用施策が急務。
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商品認知は依然「店頭が主役」——リテールメディアはブランディングにも効く

電通デジタルの「2025年リテールメディア調査」(29カテゴリー・1,200名対象)で、消費者の商品認知チャネルとして店頭(オフライン)が依然として最多であることが確認された。特に食品・日用品では、ECモールより実店舗での認知が主流。さらに同調査では、リテールメディアへの接触が「商品認知」「興味喚起」「商品理解」というブランド指標の向上にも一定の効果を発揮することが明らかになり、販促費だけでなく広告宣伝費の投資対象としての価値も証明された。ロイヤルカスタマー育成の観点からも、店頭接点の強化は引き続き最優先課題だ。
📌 実務的示唆:「知ってもらうのは店頭、買い続けてもらうのはアプリ」という二段構えの接点設計が、2026年の販促戦略の基本形になりつつある。
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AI・IoTが店舗分析を民主化——小規模小売でも「データ経営」が現実に

AIカメラによる来店者動線分析・滞留時間計測・属性推定のコスト低下が著しく、これまで大手にしか導入できなかった店舗分析ツールが中規模小売でも活用されるようになっている。POSデータと組み合わせた「どの棚のどの商品が手に取られたか」のリアルタイム把握は、棚割り最適化と在庫補充の精度を劇的に向上させる。また、NFCタグを活用したデジタルスタンプラリーやリアルタイムクーポン発行なども普及が加速。AR(拡張現実)を使った商品情報提供・試し体験も、外国人観光客への対応を含め活用事例が増加している。
📌 導入優先度:まずAIカメラと流通アプリのクーポン機能の組み合わせから始めると、投資対効果の説明がしやすく、次のDX投資へのステップとなる。